半導体製造の「入口」と「出口」で起こすイノベーション ダイトロンテクノロジー株式会社 EM事業部 技術2課 課長 川邉 茂雄、技術1課 課長代理 森下 哲也、副事業部長 尾崎 雅英

近年爆発的に需要が高まっている半導体。その分野で、ダイトロンの「面取機(ウェーハ端面形状研削機)」「チップソーター(ウェーハチップ自動選別機)」という、半導体製造における「前工程」と「後工程」を担う2つの装置が世界を舞台に活躍している。装置の開発に携わっているダイトロン株式会社装置事業部門の精鋭3人が、製作秘話や高い評価を受けている理由などについて語る。

担当A・・・電気・ソフト設計 | 担当B・・・機械設計 | 担当C・・・セールス

INTERVIEW 1 世界から高く評価される2つの装置

ダイトロンで作られている半導体の製造装置についてお聞かせください。
担当C :
ウェーハ(半導体基板の材料)を円形などに加工して整える面取機と、ウェーハから切り出されてチップ上になったものをシートから剥がしてトレイに詰めるチップソーターという装置があります。この2機種がメインですね。
担当A :
面取機の方は日本をはじめアメリカ、中国、ドイツなど世界中のさまざまな国に販売実績があり、これまでに900台を超える台数を出荷しています。LEDチップ用の基板であるサファイアを使った硬いウェーハを高精度で安定して加工できる技術を持っているのは世界広しといえど当社以外にほとんど存在しないと思います。おかげさまで、サファイア研削においては、当社の製品が世界的にスタンダードとして認知されています。
担当B :
チップソーターに関しても、世界中で700台以上販売しています。市場での稼働台数が他社より多く、歴史も長いので、製品に対するお客様の信頼を強く感じます。台湾市場では、現地の競合メーカーより価格が多少高くても、当社をお選びいただいています。

INTERVIEW 2 世界初、コンピュータ制御による面取機を開発

現在世界に向けて出荷されている面取機は、どのように開発が始まったのでしょうか?
担当C :
開発を手掛けた当時の研削機は、「倣い(ナライ)式」と言って、仕上げと同じ形をしたウェーハをマスターにして、それをもとに未加工のウェーハを砥石で研削するような方法でした。合鍵を作るのと同じ要領ですね。例えば100ミリ径のウェーハを加工する場合は、100ミリ径のマスターを準備しなければならないという「アナログ式」が主流だったわけです。この分野へ新規参入するにあたりもっと効率と精度を高めたい!と模索し続けた結果、「NC(Numerical Control)」を採用することにしました。いわゆる、コンピュータによる数値制御ですね。
担当A :
面取機におけるNCに取り組んだのは、当社が世界初でした。 そして、位置や速度をデジタルで制御できる「サーボモーター」を使った駆動部を持つ面取機を完成させました。数字を入力すればその分だけ正確に削ってくれるので、マスターを用意する必要がなくなり、研削するスピードから位置まで自在にコントロールできるようになりました。現在はそこからさらに進化していますが、開発当時は画期的な出来事でしたね。
担当B :
ウェーハは、サイズが大きければ大きいほど一度にたくさんのチップを切り出せます。そのため90年代は200ミリ径、90年代後半からは300ミリ径というように、時代とともに主流となるウェーハ口径サイズが大きくなっています。私たちは、お客様が求められるウェーハ外周径と端面形状の加工品質に、いつでも対応できるように努めています。

INTERVIEW 3 シリコンからサファイアまで高精度で加工する世界屈指の技術

高く評価される加工精度の秘密と、サファイア研削の経緯について教えてください。
担当C :
LEDの登場によってシリコンウェーハの需要が高まったとき、当社は時代のニーズに応えるために、高い安定性や精度、機械のコンパクトさなどを追求した完成度の高い面取機の製作を目指すようになりました。
担当A :
研削部の素材を鉄の削り出しから鋳物に変更するなど、試行錯誤を繰り返しながら加工精度を向上させていきましたね。研削部の剛性を高めると振動が減って加工精度が高まります。そして、加工精度が高まると自然と加工速度も上がるんです。いつもそういったトータルイメージを持ちながら設計に取り組んでいました。
担当B :
開発・改良過程で問題となったのは、研削性能の向上を優先させたため、コストが高くなってしまったことです。そこで、これまですべて自社で設計・製造していたのを改め、外部専門メーカーとのコラボレーションを積極的に行いました。その結果、「コア技術」部分の開発に特化でき、今日の精度と信頼性を両立した装置に仕上げることができました。当初の製品に比べて、生産性と処理能力も格段に向上しています。
担当C :
元々はシリコンウェーハ用に開発した面取機ですが、その加工精度と安定性からサファイア基板の加工にも適していたんです。そのため、意図していたわけではありませんが、年々サファイア基板の需要が高まるとともに、高精度でサファイア研削できる面取機として市場で高く評価していただけるようになりました。
担当A :
絶えず製品クオリティを追求し続けていたことが実を結び、結果的に「新たな時代の声」に応えることができた、と言ってもいいかもしれません。

INTERVIEW 4 さらなる加工精度を求めて開発は続く

今後はどういった面取機を開発される予定なのでしょうか?
担当C :
お客様よりご好評いただいたWBMシリーズをさらに高い次元でレベルアップさせた装置を開発しています。これまでと全く違うアプローチで、加工形状の自由度と精度を格段に向上させようとしています。かいつまんで言えば、最近、ウェーハは最終的に極薄に加工される場合が多いのですが、薄くするときに端面形状が悪いと割れてしまうケースがあるので、最初から割れ難くすることを見越した自由なシェイプにできるというのが大きなポイントですね。
担当A :
削る前の状態だとウェーハは0.8ミリほどの厚みなのですが、それをどんどん削っていくと0.05ミリ以下の薄さになります。0.05ミリというのは髪の毛の太さの半分以下です。「紙の厚み」以下どころか、シリコンが透けて見えるくらいペラペラの薄さなんですよ(笑)。その薄いウェーハが、私たちの身近にあるUSBメモリーやマイクロSDなどに搭載されています。
担当B :
例えば、ウェーハが薄いほど、ひとつのカードにチップをたくさん重ねることができるので、マイクロSDの容量をさらに大きくできるわけです。装置の精度を高めることで、お客様のイノベーションに応えていきたいですね。

INTERVIEW 5 チップソーターを進化させる「マイスター」の力

チップソーターも高い評価を受けている理由はなんでしょうか?
担当C :
チップソーターは古くから製造しており、これまでニッチな市場の中で、お客様から寄せられるご要望に細かく丁寧に応えてきたという自負があります。
担当A :
シンプルなことですが、針でチップの上面を吸着するアイデアは、他社に先行して一番早くから始めていました。また、チップの大きさによって、どのように針の配置を調整すれば、チップにダメージを与えることなく効率よく取れるのかをひたすら考え続けてきましたね。
担当B :
当社のソーターは、装置設計上、チップをピックアップする機構とプレイス(置く)機構を装置の正面側に近く、そして正面に対し平行上に設置することにより、動作や状況の確認、調整などがしやすくなっています。他社製品は、奥方向にレイアウトしてあるものが多いので、確認しにくかったりするんです。何気ないことで、設計の考え方の違いと言えばそれまでですが、当社ではお客様が使っていただくときに「何が大事なのか?」を細部まで考慮した結果、そのようなレイアウトにしています。とても使いやすいとお客様から高く評価されている部分です。
担当C :
当社には、長年チップソーターの立上げと調整に携わってきた「マイスター」と呼べる専門家がいます。「どんなチップでもピックアップして収納する!」という情熱と蓄積してきた知識やノウハウがあるので、お客様のニーズに応えることはもちろんですが、お客様のニーズを「見つけ出す」自信もあります。慢心せずに、これからもチップソーティングの道を探究していきたいですね。近い将来、業界を「アッ!」と言わせて、お客様を「なるほど、これしか無い!」と感心させるような装置を企画しています。楽しみにしていてください。