医療から工業まで、幅広い分野で活躍しているダイトロンの電源装置。なかでも低ノイズを実現したスイッチング電源シリーズは、業界で大きな注目を集めている。開発に携わったダイトロン株式会社部品事業部門の製品開発担当者が、製品にかける思いや未来の電源装置について語る。

INTERVIEW 1 ノイズが発生しやすいスイッチング電源

そもそも「スイッチング電源」とはどのようなものなのでしょうか?

スイッチング電源が登場するまでは、「リニア電源」が主流でした。これは、安定した電力を出力するために、入力される電圧の変動に対して不安定な部分はすべて捨ててしまうという仕組みの電源装置です。そのため、ロスが多くて効率が悪いというデメリットがありました。そこで登場したのがスイッチング電源です。小刻みにオン・オフを繰り返し、入力電圧や負荷の変動に応じて、このオン・オフの時間を制御し、安定した電力を供給する仕組みになっています。蛇口をひねったり閉じたりして、水の出る勢いや量を調整するイメージと言えばわかりやすいかもしれません。このようにオンとオフを上手に切り替えることで、エネルギーのロスを抑えながら安定した電力を出力することができるのです。
しかし、スイッチング電源にはオンとオフの切り替え時にノイズが発生してしまうという弱点があります。そのため、ノイズによって機能に支障が出る機器にはドロッパー電源が使われています。現代では、高効率でコストが低く、小型・軽量なスイッチング電源の方が主流になっていますが、低ノイズのものが少ないため、リニア電源を使わざるを得ない機器もあります。

INTERVIEW 2 あえて「スイッチング電源で低ノイズ化」という独自の道を進む

スイッチング電源は、ノイズをいかにして減らすかが業界のテーマになっているのでしょうか?

いいえ、業界内の多くのメーカーが「小型」「低コスト」「高効率」の路線を目指しています。しかし、それらの条件を満たしたスイッチング電源には、どうしてもノイズがつきまといます。私はお客様と直接お話する機会が多いのですが、電源ノイズの対策で大変な苦労をしているという声をよくお聞きします。そこで当社は、ノイズ対策の必要がないスイッチング電源を開発すれば、お客様の負担を減らせられるのではないかと考えました。もしも、リニア電源と同レベルにまでノイズを抑えることができたら、スイッチング電源が持つ最大の欠点はなくなります。こうして、お客様の悩みに応えるために、他社とは異なるアプローチ「低ノイズ化」への挑戦が始まったのです。

INTERVIEW 3 長年の経験と理論で、“電気の流れ”をイメージする

低ノイズ化を進める上で、一番苦労する点はなんでしょうか?

単刀直入に言えば、そう簡単にはノイズは小さくならないということですね。スイッチング電源はアナログ回路です。回路を触るたびにノイズが大きくなったり小さくなったりするので、波形を見ながらひたすらにいじり倒して些細な変化を探しています。毎日「あ!これで大きくなるんだったら、逆にこうすれば小さくなるな」ということの積み重ねですね。「電気の流れをイメージする」作業と言ってもいいかもしれません。しかし、ノイズが小さくなる方法を発見したとしても、コストとの兼ね合いがあるので、闇雲に低ノイズだけを追求していれば良いというわけではありません。技術的には、さらなる低ノイズのスイッチング電源を作ることも可能です。しかし、それが「商品」として成立していなければ何の意味もないのです。低ノイズと低コストを両立させて、より良い製品を生み出すために、日々あらゆる可能性を模索しています。

INTERVIEW 4 スイッチング電源が持つ可能性を引き出し、お客様の期待を超える

低ノイズのスイッチング電源は、主にどのようなお客様から求められているのでしょうか?

当社の製品は、主に「電源ノイズが機器の性能に悪影響を及ぼすので改善したい」「ノイズ対策にかかる時間と費用を削減したい」「ノイズの問題でリニア電源を使用しているが、電源装置の小型化と高効率化を図りたい」といったご要望を持つお客様向けに作っています。
低ノイズと一概に言っても、お客様のニーズはさまざまです。ドロッパー電源並みの低ノイズでも、さらに小さくしてほしいと要望されることがあります。微小の信号を扱う計測機器関係のお客様などは、スイッチング電源の後ろにノイズフィルターを組み込んで使われていますね。お客様から「機器の性能が向上した」「ノイズ対策の心配がなくなり楽になった」といった喜びの声が聞けたときは本当にうれしいですね。中には「すごい電源だ!」と絶賛してくださる方もいらっしゃいます(笑)。電源装置が機器の性能にそこまで大きな影響を与えるとは想定していなかったので、とても驚きましたね。低ノイズはとてもニッチな世界ですが、どこまでも果てがなく、まだまだ色々な可能性を秘めていると思います。

INTERVIEW 5 究極の「ノイズフリー」への思い・・・そして、電源装置で社会貢献

新製品(LFSシリーズ)はどのような製品ですか?今後どのような製品開発を目指していかれますか?

今度の新製品LFS50A、LFS150Aは当社電源の特長である低ノイズ性能を維持したまま①高効率化、②小型化をした製品になります。
従来よりもコンパクトになったことで、より幅広い製品にお使いいただけると思います。今回もノイズにこだわって開発を行いましたが、その根底には、お客様の目線で使いやすい電源装置を作りたいという思いがあります。製品開発を続けて、いつかは「スイッチング電源はノイズが出る」という既成概念を打ち破りたいと考えています。
また、これからは、低ノイズとともに高効率と省エネ性を追求し、エコという観点からも社会に貢献していきたいですね。また、電源装置の性能向上は、それを搭載する機器の性能アップにもつながります。人々の未来を明るくできる機器開発の一翼を担うことができればうれしいですね。
現在、アナログからデジタルという時代の流れもあり、電源装置の設計者が少なくなっていると言われています。しかし、電源装置にはまだまだ進化する余地があり、ビジネスとしても大きな可能性を秘めています。一企業の社員としてはもちろんですが、ひとりの“技術者”として、電源装置の奥深い世界を究めてみたいですね。